メガバンクで営業、ネット系事業会社で金融事業開発、外資系コンサルで金融機関コンサル、三社三様で金融に関わり続けている金融マン、Keijiです。
キャリアについての相談って、コーチングがふさわしいのだろうか…
コーチングという言葉、聞いたことありますか?
おそらく、この記事を読んでくれている方の多くが「コーチングとはどんなもので、何を得られるものなのかまだよくわかっていない」という状態かなと思っています。
ここでは、プロコーチとして副業で稼いでいる僕が、「コーチングとは何なのか」「何をするものなのか」「何を得られるのか」「キャリアとコーチングの関係性」などについて解説していきます。読んでもらえるとコーチングの必要性や重要性、どのタイミングでコーチングを受けるべきなのかが分かってくるはずです。
そもそもコーチングとは何か?
まずコーチングとは何か?実はこれ、一律の定義はないんです。コーチ連盟や大手コーチングスクールが各社のWEBページで定義を紹介しますが、それぞれ微妙に異なっています。
コーチングとは、本人特有の感情や思考のはたらきを行動の力に変えることで目標達成や自己実現を促す、コミュニケーション技術です。
一般社団法人日本コーチ連盟
コーチ・エィでは、コーチングとは自発的行動を促進するコミュニケーションと定義しています。
コーチ・エィ
銀座コーチングスクール(GCS)では、コーチングを以下のように定義しています。
銀座コーチングスクール
パフォーマンス向上のために、対話によって対象者を勇気づけ、”気づき”を引き出し、”自発的行動”を促すコミュニケーション・スキル。
ちなみに、ChatGPT先生に聞いたところの答えはこちらでした。
コーチングとは、対話を通じて相手の自律的な行動を促し、目標達成を支援するコミュニケーション手法です。
すべてに共通する言葉が「コミュニケーション」。次いで多いのが「自発的/自律的な行動」、続いて「目標達成」となっています。これらを繋げると、コーチングとは「コーチとのコミュニケーション(対話)により、本人の自発的/自律的な行動が促され、結果的に目標を達成できるもの」ということになります。
まだ少し抽象度が高く、わかったような、わからないような状態かもしれませんが、上の定義を言い換えて、コーチングとは「何か目標を達成したい」 or 「何を達成したいかはわからなけれど現状に対して不満やモヤモヤがある」状態から、自分自身の力で目標達成できるお手伝いをしてくれるもの、ということを抑えてもらえれば大丈夫です。
カウンセリング、コンサルティングとの違い
1対1の「コミュニケーション」という点で連想されるのがカウンセリング、「目標達成(もしくは課題解決)」という点で連想されるのがコンサルティングだと思います。これら2つとコーチングは全く異なる目的とアプローチで、違いをまとめたものがこちらです。
目的 | アプローチ | |
---|---|---|
コーチング | 精神的に健全な状態から目標達成を支援する(自己肯定→自己効力) | コーチからの問いかけにより、本人が目標達成に必要なことを見つける |
カウンセリング | 精神的にマイナスの状態から通常の状態へ戻す(自己否定→自己肯定) | 本人の気持ちを整理することに重点を置き相談に乗る |
コンサルティング | 本人が抱える課題を解決したり、目標を達成する | 知識・情報・ノウハウを持つコンサルタントが解決策を提示する |
コーチングとカウンセリングの違い
コーチングとカウンセリングの似ている点としては、クライアント(カウンセリングではカウンセリー)が思っていることや感じていることを話し、コーチやカウンセラーが傾聴するというところです。
ただ、その目的が大きく異なります。カウンセリングは精神的にマイナスで、自己否定状態にある人を自己肯定できる状態まで持ち上げることを目的とします。過去に焦点が当たって縛られてしまっている人を、現在に焦点を当てられるように変化を促すのです。
一方コーチングは、自己肯定はできていて現在に当たっている焦点を、理想やゴール、目標といった未来に当てられるように変化を促します。今の自分を認めているだけではなく、理想の未来を自らの手で作っていける状態へ変容させるのです。この、理想の未来を自らの手で作っていけると信じられる状態を自己効力と言います。

コーチングとコンサルティングの違い
コーチングとコンサルティングの目的はどちらも「目標達成」や「課題解決」で、似ていると感じるのではないでしょうか?僕自身コンサルティングファームにいて、コンサルタントとしてもコーチとしても、どちらもプロとして働いていますが、目的は似ていると感じています。「こうなりたい」や「今の現状から抜け出したい」というクライアントの思いを叶える為に働くという点はコーチングもコンサルティングも同じです。
一方で、その目的を叶える為のアプローチは大きく異なります。コンサルタントは専門家として解決策を提示します。「A案とB案とC案があります。一番のおすすめはA案ですが、どうしますか?」と。最終的に決断するのはクライアントですが、クライアントは解決策について深く考える必要も詳しく調べる必要もありません。コンサルタントが既に一生懸命考えて、詳しく調べてくれているからです。
対するコーチングにおいては、コーチは解決策や答えを持っていません。仮に解決策や答えを持っていたとしても、それをアドバイスすることはありません。もしそれを言ってしまうコーチがいたら、その人は二流、いや三流コーチです。本物のコーチは「この人はきっと自分の中に答えを持っている」と、相手の可能性を信じて問いかけます。「その課題を解決する為に必要なことは何だと思いますか?」や「あなたの尊敬する人だったら、その課題に対してどのように取り組むと思いますか?」といった具合に。
なぜなら、コーチングとは「自発的/自律的な行動」を促すものだからです。コーチが「解決のために必要な打ち手はこれですよ」と言った場合、クライアントは答えが分かって、その瞬間は良いかもしれません。ですが、その後自発的/自律的な行動は期待できません。「他人が決めたこと」と「自分で決めたこと」、どちらが行動に結びつくかは、あえて説明せずともお分かりだと思います。
コンサルティングが有効に機能するのは、特に会社などの組織においてです。組織において重要視されるのは理論やロジックで、誰が考えた答えであっても一番望ましい選択肢であれば、組織の決定事項として動かすことができるからです。一方、個人は理屈よりも思いや感情で動くものです。自分が心の底から納得しない限り、大きな行動変容はできません。その為、個人の目標達成や課題解決においてはコンサルティングよりもコーチングが機能することが多いです。

なぜ、キャリアにおいてコーチングが必要なのか?
かつての日本では、「業績が安定した会社に入れば一生安泰」でした。終身雇用、年功序列、定年退職というシステムが個人のキャリアを保証してくれたからです。しかし、こうしたモデルは今や崩壊しつつあります。あの世界のトヨタですら、豊田前社長が「終身雇用を守っていくのは難しい」と発言する時代です。
それと同時に、転職が特別はなくなったという変化が起きています。かつては転職に対して、「忍耐が足りない」、「不安定な選択」といったネガティブな印象が付きまとっていましたが、今や若手〜中堅層の間で、転職はキャリアアップやキャリアチェンジの有効な手段として一般化しています。
これら変化は、働く個人にとって「自分のキャリアは自分でつくる」という姿勢を求めるものです。会社が決めたレールに乗るのではなく、「自分はどう働きたいのか」、「どんな人生を送りたいのか」という問いに向き合い、自分なりの道を見つけていく必要があります。自分自身の強みや価値観、理想の働き方を理解していなければ、転職してもまた同じような悩みを繰り返すだけです。
この「自己理解」は、実は一人で行うのが非常に難しい領域でもあります。なぜなら人は、自分の思考パターンや行動の背景にある価値観を、無意識に抱えたまま生きているからです。自分のことを本当に理解するには、他者の視点や問いかけを通じて、あらためて自分を見つめ直す必要があります。
ここで登場するのがコーチングです。コーチとの対話を通じて、「自分は何を大事にしているのか」「どんなときに充実感を感じるのか」「なぜ今の仕事に違和感があるのか」といった“思考の深掘り”を行うことで、自分の人生の目標が言語化でき、それに伴って転職やキャリアの選択における軸が見えてきます。
実際のコーチングはどんなことをするのか?どんな流れで進むのか?
コーチングに興味はあっても、「実際には何をするのか分からない」「ただ話すだけで意味があるの?」と感じる人は少なくありません。ここでは、一般的なコーチングセッションの流れを紹介します。
役割 | 時間 | 内容 |
---|---|---|
オープニング | 5分 | 簡単な挨拶や近況確認から始まります。継続的なセッションであれば、前回のセッションからの変化や、気になっていることを共有します。 |
テーマ設定 | 5分~10分 | その日のセッションで話したいテーマを明確にします。例えば「転職すべきか悩んでいる」、「今後のキャリアの方向性を整理したい」などです。テーマが曖昧でも、コーチが丁寧な問いかけを通じて一緒に整理します。 |
深掘りと内省 | 30分~40分 | コーチの問いかけに答えながら、自分の考えや感情を言葉にしていきます。ときには「なぜそれを重要だと感じるのか?」や「本当はどうしたいと思っている?」といった深い質問を受け、自分でも気づいていなかった価値観や本音が浮かび上がってくることもあります。 |
行動の明確化 | 5分~10分 | セッションで得られた気づきをもとに、「次にどう動くか」を具体的にします。小さなアクションでも、自分の意思で決定します。 |
クロージング | 数分 | セッションを通じての気づきや感想を振り返り、必要に応じて次回のテーマや方向性を確認して終了します。 |
ここまで説明してきたように、コーチは何かアドバイスをするものではありません。あくまでもクライアントの考えや答えを引き出すための存在です。その意味で、コーチとは「自分自身の鏡」のような存在です。鏡がありのままの姿を映し出すように、コーチとの対話は、自分自身の思考や感情、価値観、葛藤といったものを表面化・言語化させてくれます。
自分の内面は、ひとりで考えていると堂々巡りになりがちですが、鏡としてのコーチがいることで、思考が整理され、気づきが生まれます。コーチングは、「自分を知り、自分の力で答えを見つけるためのプロセス」です。
コーチングを受けることで得られるもの
ここまでの説明でも、コーチングによって得られるものは触れてきましたが、改めて得られるものの一例を挙げていきます。
自己理解の深化 ー 自分の価値観や強みに気づく
まず得られるのは、自己理解の深まりです。コーチングの対話を通じて、自分が何を大切にしているのか(価値観)、どんな時に自然と力を発揮しているのか(強み)、逆に何にストレスを感じやすいのか(弱み)など、これまで漠然としていた「自分」という存在が、少しずつ輪郭を持ち始めます。
多くの人が、日々の仕事や忙しさの中で、自分の本音や本当の欲求にフタをしてしまいがちです。コーチとのセッションは、それらを少しずつ解きほぐし、「自分はどうありたいのか」「本当に求めているのは何か」という本質的な問いに向き合う時間でもあります。
モヤモヤの言語化
次に、多くの人が抱える「なんとなくの違和感」や「言葉にならないモヤモヤ」を、言語化できるようになります。これは非常に大きな効果です。
例えば、「今の仕事に違和感があるけど、辞めたいわけではない」「成長したいけど、何をしたいのか分からない」——そんな漠然とした状態でも、コーチは丁寧に話を聴き、質問を重ねながら、そのモヤモヤの正体を一緒に探ってくれます。そうして自分の内側にある感情や考えが言葉として整理されることで、次に取るべき行動が自然と見えてきます。
行動の一歩が踏み出せる
コーチングは「気づき」で終わりません。得た気づきをもとに、「では、まず何をやってみるか?」という行動に落とし込むところまでをサポートします。大きな目標を掲げなくても、「まずはこの人に話を聞いてみよう」「今月はこの本を読んでみよう」といった小さな一歩を、自分の意思で決めて進んでいけるようになります。
コーチは、その行動を応援し、必要であれば次回セッションでフォローしてくれる存在です。一人で決めきれないことも、コーチという伴走者がいることで、不思議と前に進む力が湧いてきます。
どんな人に向いている?おすすめのタイミング
コーチングは、誰にでも有効なサポート手段ですが、特に「こんな状態のとき」に受けると大きな効果を感じやすいと言われています。ここでは、コーチングが特に向いている人や、おすすめのタイミングについて整理してみましょう。
何をしたいか分からない人
実はコーチングが役に立つのは、「明確な目標がある人」だけではありません。むしろ、「やりたいことが分からない」「今の仕事に違和感があるけど、何が問題なのか整理できていない」といった“モヤモヤ”を抱えた人にこそ、コーチングは効果的です。
「このまま働いていて、どこに向かっているのか分からない」
「周りに合わせて生きてきたけど、自分の意思で何かを選んだことがない」
こうした言葉は、実際に多くのクライアントから聞かれる悩みです。これらは「答えがない」悩みのように思えますが、問い続けることで少しずつ見えてくるものでもあります。
コーチングでは、正解を与えることはしません。しかし、「なぜそう感じるのか?」「本当はどうしたいのか?」といった本質的な問いを重ねることで、本人が自らの内側から答えを見つけられるようにサポートします。自分の中にある“本音”や“価値観”に触れることで、やがて「この方向に進んでみたい」という納得感のある選択肢が浮かび上がってくるのです。
やりたいことが分からない人や、キャリアの方向性に迷いがある人にとって、コーチングは「人生の地図を描くためのコンパス」のような存在になり得ます。
転職・副業・独立などに悩む人
キャリアの大きな転機を迎えるとき——たとえば転職、副業、起業・独立などを考え始めたときにも、コーチングは心強い味方になります。
これらの選択肢は、人生を左右する大きな決断になることが多く、簡単には答えが出せません。しかも、周囲の意見(家族、同僚、上司)に引っ張られてしまったり、「世間的に正しい選択」を探そうとしてしまったりして、自分の本当の望みが見えにくくなることもあります。
コーチングでは、他人の期待や常識ではなく、「あなた自身はどうしたいのか?」という本質にフォーカスします。そして、現実的な視点も踏まえながら、自分らしいキャリアの選択をサポートしてくれます。「正解のない選択」だからこそ、答えを押しつけないコーチングのスタイルが非常にフィットするでしょう。
まとめ
- コーチングとはコーチとのコミュニケーション(対話)により、本人の自発的/自律的な行動が促され、結果的に目標を達成できるもの。もう少し噛み砕くと、「何か目標を達成したい」 or 「何を達成したいかはわからなけれど現状に対して不満やモヤモヤがある」状態から、自分自身の力で目標達成できるお手伝いをしてくれるもの
- コーチングを受けることで得られるメリットの一例は「自己理解の深化」や「モヤモヤの言語化」、「行動の一歩が踏み出せる」こと
- コーチングを受けるべきタイミングの一例は、「何をしたいかわからない状態の時」、「モヤモヤが言語化できない時」、「転職・副業・独立などに悩んでいる時」