変わりゆく金融業界、取り残されないために今すべきこととは?

メガバンクで営業、ネット系事業会社で金融事業開発、外資系コンサルで金融機関コンサル、三社三様で金融に関わり続けている金融マン、Keijiです。

毎日の業務や家庭(子育て等)が忙しすぎて、考えている暇がない…
漠然とした不安はあるけど、具体的にどうすればいいのかわからない…
転職エージェントは、ただ転職を勧めるだけでキャリア相談できる相手がいない…

漠然とした不安がありながらも、日々の忙しい業務や育児などに忙殺されて落ち着いて考える暇もない人も多いと思いますし、考える時間が取れたとしても何をどう考えたらいいのかわからない方も多いと思います。

このブログではそんな方々の役に立てるよう、何かのヒントになってほしいという思いで書いていて、この記事では今の金融機関が置かれた環境や、そこで働く金融マンの方々が今後どうなっていくのか、そして今何をすべきなのか、僕なりの考えをお伝えしていきます。

目次

金融業界の現状と将来

僕は職業柄多くの金融機関の方と会話する機会があり、どこの会社でも抱えている問題と構造は似通っていると思っています。金融機関が共通で置かれている足元の現状を見つつ、今後どう変わっていくのかを見ていきます。

金融機関が直面している現状とその要因

銀行を始めとする日本の金融機関は規制業種で、良くも悪くも規制に守られてきました。昔からの蓄え(ストック)で儲かるような仕組みがあり、参入障壁が高い為ビジネスモデルを大きく変える必要がありませんでした。

ですが、ここ最近ではその流れが大きく変わってきていて、既に地方銀行の約15%が本業赤字との報道もあります。その大きな要因が「人口減少による経済縮小」「他社参入による競争激化」です。

「人口減少による経済縮小」は誰もが知っている問題だと思いますが、特に地方では人口減少の問題が深刻です。地域金融機関によっては自社のテリトリーだけではビジネスが立ち行かなくなる為、エリア拡大を進めているところもあります。また別の金融機関では、儲かるビジネスと儲からないビジネスの取捨選択を進め、儲かるビジネスのみに注力しているところもあります。

「他社参入による競争激化」も深刻な問題です。楽天やPayPay、LINEなどによる決済サービスの機能進化や銀行業への進出により、金融機関の専売特許であった「預金」と「為替」による収益機会は激減しました。長引く低金利環境という背景もありますが、ネット専業銀行と地方金融機関の預金の伸び率は歴然です。

金融機関自身もその状況を理解していて、色々な対策を講じていることは認識しています。ですが、これまで大きなビジネスモデルチェンジを経験してこなかった今の経営者たちが、抜本的なビジネス改革を推進できるかと問われると疑問が残ります。個人的には、必要以上に横(他行)の動きを見ず、自分たちが生き残る為に必要なことを考え、他にやっている事例がなかったとしても邁進していく勇気と気概が必要なのではないかと思っています。

金融と言いつつ銀行中心の話をしてしまいましたが、銀行以外の金融業界(証券、保険、カード等)においても例外ではありません。特にテクノロジーを持った企業の参入は、証券、保険、カード等金融機関全てのジャンルに大きな脅威となります。

金融機関のこれから

今後10年で金融業界はどう変わるのか。それを考えるには、以下の3つのキーワードが重要です。

デジタルファースト社会の到来

スマートフォンアプリ、ネット銀行、AIによる審査や顧客対応など、金融サービスは今や「人を介さずに完結する」ことが前提になりつつあります。今後は金融機関が“IT企業化”することが不可避となるでしょう。実際、SBIグループは積極的にデジタル人材を採用し、ブロックチェーンやDeFi(分散型金融)への取り組みを強化しています。

新しい価値基準の台頭

「モノからコトへ」「利益から社会的意義へ」といった価値観の変化により、ESG投資、インパクトファイナンス、サステナブル金融といった新たな分野が注目されています。三井住友信託銀行や日本政策投資銀行は、こうした分野における商品の開発や情報発信を積極化しています。特に若い世代の投資家や利用者は、金融機関に“社会的責任”を求めています。

グローバル競争の激化

金融に国境はありません。GAFAをはじめとした巨大テック企業、アジアの急成長ファイナンス企業などが日本市場に参入し、国内金融機関は世界的な競争に巻き込まれています。実際、PayPayやLINE Payといった国内外のキャッシュレス事業者の躍進は、銀行の決済業務に大きな影響を与えています。

金融機関で働く人の行く末と具体的な対策

ここまで、金融機関という会社単位で足元と将来について考えてきました。ここからは金融機関で働く人個人単位でこれから本格的に訪れる変化と、具体的な対策について解説していきます。

金融マンに訪れる変化

金融機関が自然体で儲けられる時代でなくなったことにより、そこで働く人は効率性が強く求められるようになってきています。つまりは、機械で代替できる業務は機械にやってもらい、人は人間にしかできない/価値がある業務に集中させる変化が起きます。職種単位で考えると次のような変化が現れます。

  • 法人営業:企業へのコンサルティング力が求められ、単なる融資ではなく経営支援が鍵に
  • 個人営業:対面営業からオンラインチャネル活用へ。主に富裕層への提案力が焦点となる
  • 市場部門:データ分析スキルやプログラミングの素養が必須に
  • 内部管理:コンダクトリスク管理、サステナビリティ対応が高度化する

融資はAIを活用した精度の高い仕組みを構築し、個人営業は若年層はスマホアプリなどのデジタルチャネルで対応するようになり、市場部門はAIを用いた売買判断を下すようになり、内部管理はデータを活用したモニタリングをおこなうようになります。それぞれAIを始めとするテクノロジーがどんどん大きな役割を果たすようになってきます。

さらに、会社などの組織単位では以下のような変化が表れます。

  • 終身雇用から自律的キャリアへ:会社に依存せず、自分の市場価値を高める努力が必要
  • 年功序列から成果主義・プロジェクト型組織へ:与えられる役割より、自ら創り出す役割が重視される時代に

金融機関に限定された話ではありませんが、50歳、60歳になっても高い給料を保証する年功序列で終身雇用では会社の経営が成り立たなくなっていて、必要な業務をできる人間がやるというアメリカのような自律的でプロジェクト型の雇用形態に変わりつつあります。日本とアメリカでは文化や法律などがまるで違うため、すぐに米国化はできないですが、徐々に近づいていくのは間違いないと思っています。

徐々に変わっていくというのは良い面もありますが、悪い面もあります。それは環境の変化に気づきにくいことです。会社や組織などの環境が少しずつ変わっていき、能力があったり業務ができる人しか求められていない仕組みが出来上がってしまってから気づくのではもう手遅れです。いわゆる「ゆでガエル」というやつです。

読売新聞

金融マンが取るべき具体的な対策

そんな状況に置かれた金融マンは果たして何をすればいいのか?僕なりの答えは「一旦じっくりとキャリアを見つめなおしてから行動すること」です。

世の中では、副業や自己研鑽、スキルアップなど声高に言われるようになりましたし、稼ぐ方法も学ぶコンテンツもかなり豊富になりました。ですが、副業、自己研鑽、スキルアップはあくまでも手段でしかありません。目的は「自分が納得いく、後悔のないキャリアを歩むこと」です。稼げることに目が眩むと、アルバイトのような自分のスキルストックに繋がらない一過性の労働集約型の仕事に手を出すことになります。また、目的なき自己研鑽やスキルアップは、出口の見えない迷路に陥り、活かされることのない資格ホルダーになるのが関の山です。

僕もこれまで、宅建の資格取得や英語(TOEIC)やプログラミング等々、数々の自己研鑽に取り組んできました。ですが、自分の歩みたいキャリアという目的なくした自己研鑽はほぼ意味がありませんでした。中身を一切忘れてしまった資格もたくさんありますし、英語はとりあえず勉強してみたもののモチベーションが続かず三日坊主…目的がないとそんなもんです。

『目的を見つけよ。手段はあとからついてくる』 マハトマ・ガンディー

自分のキャリアどう歩みたいか、しっかり定まっていない方はこちらの記事で解説していますので、ぜひ一度自分のキャリアマップを作成してみてください。

金融業界に限ったことではありませんが、AIを始めとするテクノロジーの進化スピードが著しく早い現代では、現状維持では生き残れません。一方で、生き残る為、個人の力で稼ぐようになる為にひたすら頑張ることだけが正解だとは思っていません。簡単にはクビにできない日本でそこそこ適当に働き続ける、そんな働き方が自分の人生で一番良いと考えているのならば、それも正解です。

大切なことは、「今の自分」と「将来なりたい自分」を見つめ直すこと。そしてそのギャップが大きいかどうかです。大きいと感じたならば、勇気をもってキャリアを再構築することも必要です。

以下のような問いを、自分自身に投げかけてみてください:

  • 今の仕事は、自分が本当にやりたいことだろうか?
  • 社会にどんな価値を提供したいと思っているか?
  • 「あの時チャレンジしていれば」と後悔しないだろうか?

変化の時代だからこそ、自分自身の価値観に正直に、柔軟に、そして前向きにキャリアを築いていきましょう。金融というフィールドで培った経験やスキルは、決して無駄にはなりません。むしろそれは、あなたが新たなステージに進むための大きな財産となるはずです。

まとめ

  • 金融業界は規制で守られ、収益を確保できていた時代から、「人口減少による経済縮小」「他社参入による競争激化」により収益源の流出危機が進行している
  • 金融機関で働く人は「終身雇用から自律的キャリア」「年功序列から成果主義・プロジェクト型組織」といった組織改革に直面していく可能性が高い
  • 金融マンは「一旦じっくりとキャリアを見つめなおしてから行動すること」が必要。副業、自己研鑽、スキルアップはあくまでも手段に過ぎず、「自分が納得いく、後悔のないキャリアを歩むこと」という目的を基に行動することが大事。自分のキャリアが定まっていない方は、キャリアマップ作成について参照
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